ピルクル

地元の駅。家に帰る途中。慣れないスーツに疲れきってコンビニでピルクルを買う。
個室ビデオの看板にもたれかかり、地面を見つめているキャバクラの姉ちゃんに声をかけられる。キャバクラいかがですか?僕も女も目を合わせない。
数秒後、僕の背中から若い焼けた声が聞こえた。
そういえば、すれ違う瞬間、一瞬彼女をみた。もうしょうがない。それはみてしまう。

明らかに僕に対して声をかけている。背中で何か視線を感じる。でも、あいにく、スーツにピルクルである。10mぐらいはなれたぐらいから、いくらか疲れた顔を引き締めて振り返る。引き締めたところでもっとかっこ悪い顔になってるのは中学のときに取ったプリクラが全部しかめっ面だということからわかってるのだが、どうしても、気の緩みをみせたくないのでしょうがない。

今日はYシャツ祭りらしい。もものあたりまでの白いワイシャツ一枚でたたずんでいる。髪の毛はいかにもな感じで顔もどこかでみたことある。でも、もうわからない。たぶん、中学のときの同学年の奴だろう。でも、もしかしたら見ず知らずの男をひっかけるためにわざとやってるのかもしれない。そんな葛藤。瞳が綺麗なのは確かである。

3秒間、立ち止まった。向こうからよってくることを僕は淡く望んだが、たぶん向こうは僕よりも強く望んでいる。
僕は表情を変えることなく振り返り、残りのピルクルを飲み干しながら家に帰った。

そして、ご飯を食べ、返却期日が3日も先のTSUTAYAのDVDを返しに駅前に行ったら、しょうもない茶髪が個室ビデオの料金表をながめていた。

僕は彼女に一番似てるAVを借りて帰った。