みなさんTシャツを買ってください。

東京シュール5のチラシ、皆さんご覧になりましたでしょうか?メッセージはただひとつ。Tシャツを買ってください。

東京シュール5新聞ということで、まずは創刊おめでとうございます。タイトルと演者と日付しか書いてない簡素なチラシが多い中、これだけみっちりの文章が書いてあるチラシはいまだかつてないでしょう。これから、約10000字、お付き合い願いたいです。で、のちのちがっかりされてしまうのは心苦しいので最初に言っておきますが、この文章を書いてるのは皆さんお目当てのカリカさんではございません。犬の心さんでもなく、POISONGIRLBANDさんでもございません。しずるさんかライスさんかと思われている方申し訳ございません。じゃあ、もうこの組しか残ってないでしょう。そう、かたつむりさんでもございません。そこらへんはあしからず。というわけで、一観客として敬称略で10,000字書かせていただきます。
東京シュール5。この単語を聞いた瞬間、にやけうつむき我慢しようにも口の端から喜びや楽しみが漏れ滲んでいくのを覚えています。東京吉本を代表するシュール・カリカを先頭に、いわゆる世間的に「シュール」として認識されている人たちが「シュール」という看板をしょってライブをする。「シュール」という言葉はお笑いに情熱を注ぐものにとって、手軽にはさわれない、初めてタコという生命体を見たときにそれを警戒しながらもおそるおそる触れるような、市民プールで泳いでいて荷物の場所にもどったら怖そうな高校生たちが自分の持ってきたボートを膨らませるアレを勝手に使って遊んでいてちょっと待っていたらいなくなるだろうと高をくくっていたが、今度はその踏んで空気いれるアレでサッカーとかし始めてもう言おうかいわまいかなんならもう一度流れるプールで楽しもうかとおもうような、なぜだか今日は篤郎関係かなにかでRIKAKOがご立腹で、そんななか布施博が渋滞に捕まって30分遅れでスタジオに入ることがわかり、そのことをRIKAKOの楽屋に直接言いにいかねばならないADの心情のような、と、もうなんだかよくわからないが、要は、私がいいたいのは、「シュール」は言葉の使い方や発するタイミングによってその人のお笑い偏差値とでもいうべきものがなんとなくわかってしまう非常に怖い言葉であるということである。だから、普通、あまりその言葉に触れたくはない。みずからその言葉には歩み寄りたくはない。怖いから。すべてが明らかになるから。しかし、彼らは違った。数々の芸人が指先でつつくように触って様子をみていたシュールを、カリカ・犬の心・POISONGIRLBAND・ライス・しずるはわしづかんだ。ぐっとわしづかんだ。むんずとわしづかんだ。中のカスタードが指の合間からこぼれ落ちるほどに。利き手に握りしめたナマコの内臓が飛び散るほどに。
2008年。東京シュール5、始動。
そもそもこの東京シュール5カリカ・犬の心・ガリットチュウ・しずる・ライスというメンバーで形成されていましたが、2007年10月の世界シュール演芸においてガリットチュウはベタということが判明。そういえば、ガリットチュウ熊谷がいるとライブの精神年齢が一気に下がる。一瞬、舞台上が小学校の校庭にみえてくる。しかもそこに犬の心・池谷もいるとなるともう上手には砂場、下手にジャングルジムである。そこに、ランニングで裸足、右手に木の枝をもってBコース羽生が走りこんできて、ふくろとじのけんちゃんはけんちゃんでドロドロで水浸しで・・・と、もうそれはそれでいいのですが、他のライブでやってください。とにかく、ガリットチュウは解雇。そのかわりにポイズンが入り、ガリットチュウはカリカの永遠のライバルということで一切ライブに関与せず。しずるの騒動があってその穴をガリットチュウが埋めるんじゃねえか思いつつも一切関与せず。なんだこの潔さ。でも、今考えると非常にすっきりしてる。カリカ・犬の心・POISONGIRLBAND・しずる・ライス。この五組で東京シュール5になった。なった。が、しかし。第一回目を前にして諸事情によりしずる活動休止。2008年2月18日19:00新宿モリエール。第1回。開演5分前からセンターマイクの前にたたずみ表情一つ変えないPOISONGIRLBAND。そのまま一言も発さず溶暗。東京シュール伝説の始まりである。コンビがおのおのネタをやり、しずるのかわりはしずるヅラしたかたつむり。ライス。ライスはこの時ネタをみるのが二回目であったが、彼らは声がいい。特に関町。積極的に笑わせに行くというよりコント内に流れてる空間を崩さない演技ができるというのは素晴らしいです。そして、田所の随所に見せるあのあどけない笑顔はもれなく砂浜に体を埋めて顔だけ出した状態で、30mはなれたラグビーのH字型のポールめがけて蹴っ飛ばしたくなる。刺激的なことをやるのではなく静かに笑わせていくライスは貴重な存在である。ライブは5組そろってシュール会議。シュールとは何かを語る。犬の心・池谷が嬉々として「シュールは3つに分けられる!」と叫んだとき、他の9人は笑いながらも保護者の眼差しで池谷を眺め、さまざまな視線にさらされてる相方を必死にガードしようとする押見の焦りっぷりに犬の心のコンビ愛をかいま見られました。そして、誰の提案だか知らないが、5組一斉ネタ披露のカオス舞台。長編コントを繰り広げるカリカのおかげで、2度も3度も同じネタをくりかえすライス・犬の心に対して大音量の出囃子とともに遅く出てきて颯爽とネタを終わらせたPOISONGIRLBAND。舞台センターを陣取ったまま動かない。動かないというより動けない。そのときのどうしようもなく、ただただいづらくてたまらない阿部の顔はたまらなくおもしろい。昨年のM-1グランプリでも感じたが、待ちの時の阿部さんの顔は素晴らしい。FUJIWARAの原西さんの顔芸がポジティブな顔芸だとしたらポイズンの阿部のあの顔はネガティブな顔芸である。非常にいい顔である。ラストは、押見にウンコ香水をつけてカレーを食わせるという、なんとも無茶苦茶な、シュールをいいことに家城の脳内のやりたい放題で終了。みんな帰り支度してエンディングもなんともシュール5らしい。こんな感じで第一回目のライブは終了。超満員の中、私はモリエールの2階席から拝見させていただきました。上からみるシュールはなかなか乙なものでした。あ、あと、押見さんがこのライブでプッシュしていたマヂカルラブリーみました。偶然、二人とも過去に組んでたコンビのネタを見たことあったので、この組み合わせには正直びっくりしました。ボケ同士がネタ考えてる感じがして、もう理屈とか関係なく、野田クリスタルが何しでかすかわからないあの感じは見ていて小気味いいです。あのコンビ、ウケないときは思いっきりスベってるんだろうなぁ。とことんすっころんでほしいです。林さんもしずるをみておっしゃってたように、「ウケないであろうことを全力でやる」っていうのはそうそうできないことで、もうそれはすばらしいことです。やりたいことを舞台上でやるって相当凄い事です。いやぁ、いい感じです。マヂカルラブリー、かんばってください。2008年3月17日18:30築地ブディストホール。第二回。築地本願寺。葬式をやってるのを横目にシュール5。2月のライブで、「五組同時ネタ披露」という一瞬頭に浮かんでも実践にはうつしがたいことを飄々とやってのけるシュール5。今回のライブも入りは無言立ち。ライス。人かわれば立ち方もかわる。今回のライスはニブンノゴ!もやりそうな立ち方だった。ニブンノゴ!じゃなくライスでなくてはならない立ち方ではなかった。なんなら森本さんのほうがいい立ち方しそうな匂いがした。この話、聞いててわけわからんだろうし、知ったこっちゃ無いだろうが、そんな気がしたんで書きました。あ、このときの田所もご他聞にもれず、振り向きざまに顔をまわしげりしたくなるような、はさみ使えばいいのになんでわざわざ歯であけようとするの?っておもわずいいたくなるような、別に聞いてもないのに自分の運転技術をひけらかすような、いや別に運転はこっちでやるから、というかそもそもキャンプお前と行くなんて俺一言も言ってないからといいたくなるような癖のある笑顔でした。本編。しずるに対するお仕置きを考えよう会議。ここで見せるPOISONGIRLBAND吉田とカリカ林の攻めっぷり。狭い空間に閉じ込めたり、楽屋で単独ライブやらせたり、互いに口に含んだマウスピースを交換したりと、どれも派手さに欠けるが想像すると非常にいやな、理解するのにワンテンポ必要な罰をポンポンと出す2人に会場も引き気味で、見ていて気持ちよかった。またもしずる役でかたつむり。そんなかたつむりがシュール5のみんなの友情をかみしめたいという理由で、5人3人2人で各人が手をつないで各自ネタをやるという、またもひっちゃかめっちゃかな展開に。みんな面倒くさそうにくじを引く中、率先して頑張る池谷。彼が目指してるものはもはやもうわからない。くじの結果、5人はかたつむり中澤・犬の心池谷・カリカ林・POISONGIRLBAND阿部・ライス関町。3人はカリカ家城・犬の心押見・かたつむり林。2人はライス田所・POISONGIRLBAND吉田。5人のところはきれいに分かれ、田所は見事2人のところに行くミラクル。前回の5組同時ネタ披露など、この手の流れはただのリアクションによるバラエティショーにおわりがちであるが、そこは東京シュール5、10人の中庸を好むスタンスによりこれから起こるハプニングを10人がじっとりとリアクションし、そしてそのリアクションをじわじわと客はかみしめながら笑うという現象に。かみ締めて笑う。この現象こそが実にシュール5ならではである。毎日のように舞台にたってる彼らも、手をつながれた状態でしかもセリフがない状態ではもはやどんな表情をしていいかわからず、時がたつにつれその場にいる辛さが表情ににじみ出てきていて面白い。そんななかライス田所だけ意気揚々。しまいにはPOISONGIRLBANDのネタに溶け込む始末。吉田が嫌がるのもわかる。ラストは犬の心単独ライブ宣伝茶番劇。シュール5のライブは時間感覚いつもわからなくなるから、この茶番もいつ終わるかとかまったくわからない。ただただ流されていく。ただただたゆたう。身を任せてながめていたらもうエンディング。もっと堪能したかった。そんなかんじで2回目終了。ここでひとつ思ったこと。コントが見たい。この5組でコントが見たい。シュールがあつまったからこそ、あの5組だからこそのバッキバキのコントを見たいわけだが、その観客の気持ちをライブを構成するワンアイデアで満足させてしまう東京シュール5の力。そしてまた、この定期ライブを通じて大きく一発みっちりとシュールを打ち出すとき、その来るべき瞬間に来場するお客さんを今ここで精査してるのではないかなんてことも考えてしまいました。完全な邪推だと思います。で、あと、Tシャツの売れなさっぷりです。これねぇ、ちょっとねぇ、困りますよ。ライブ即完売でね、Tシャツ20枚ってね。ちょっと困りますよ。買ってください。お願いします。今年ピンク流行とかいってたし。ねぇ。買ってください。これの売れ行きいかんでね、いろいろね、シュール5ピンバッチとかね。あと、さむがり犬マグネットとかもしかしたら限定でシュール5尿瓶とかね。テルモあたりと提携してやれるかもしれないんでね。お願いしますよ。 2008年4月17日18:30新宿文化センター小ホール。第3回。しずるが戻ってきて一発目のシュール5。舞台中央で正座してるのは前回の流れからしずるであることはわかっていたのだが、照明と謹慎の具合もあいまってか誰かわからず。ブランクはおそろしい。 開演ぎりぎりに着た私はよく様子がわからなかったが、後からきいた話によると本当に開場時から舞台上でしずるは土下座させられていたらしい。大人を怒らせると怖い。今回は地獄の門番と化したシュール5メンバーが謹慎処分していたしずるに対しさまざまな試練をあたえていくオムニバス罰ゲームショー。
痛い痛い地獄、カリカ。いろんな気持ちが喚起されてライブを見てる感じではなくなる。頭の中でしずるのアングルになったり、カリカのアングルになったり。いじめられたこともいじめたことも無い自分が23にもなっていじめの気持ちよさと怖さみたいなものを一瞬だけ味わいました。女性が見たらどう感じたんでしょうか。生で見るいじめは何かと頭で補完していっていい感じでした。
電話地獄、犬の心。ファンになりすまし吉本の本社に電話をかけしずるの謹慎に関する質問をわざとさせたり、実の母親に無理やりアナルと言わせたりとしずるに相当な地獄を味わわせたが、一番の地獄は執拗に電話番号の入手先を問いただしてくる吉本社員の口ぶりにだんだん会場の観客も身を引き始め、裏もばたばたし始めたのを徐々に悟って必死にフォローする犬の心な気がします。いいもの見れた。交換地獄、POISONGIRLBAND。ここでしずるがちょっと頭がおかしいことがわかる。靴下、パンツ、ガム、エール。阿部の欲の無いジャンケンに負け続け、次々に互いの所有物を交換し続けるわけだが、二人とも多少嫌がりはするものの、迷うことなく脱ぎ履く。反省する気持ちが強いゆえこのくらいのことはやらなきゃと責任からくるものと思い最初は眺めていたが、舞台上でフルチンでいる楽しくなったり交換しながら笑みすらこぼす様子は今考えると異常で、やはりしずるも芸人だと再認識しました。撮影地獄、ライス。そんなすこし頭のおかしいしずるもさすが撮影地獄はきつそうであった。ゴールの無いいちゃつきは、厳しいものがある。出川さんとダチョウの上島さんは今日もテレビでどっぷりキスをしていたが、そこがゴールだからキスが終着地点であり周りの笑い声があるからこそやれることである。しかし、この地獄。終わりは無い。ライス田所監督の赴くままに演出され、村上は池田の乳首をなめているのである。耳に息を吹きかけているのである。で、やるほうはまだ楽である。やられるほうである。池田の顔はかるく何かの閾値をこえていた。爆笑地獄、かたつむり。シュール5ではじめてネタを見てからこの3ヶ月間、回を重ねるごとに面白くなっていった組のひとつはこのコンビな気がする。チャンスがあれば、かならず打席に立ちバットを振る林。たとえ宙をきっていてもコメントの基本をはずしてないので、この3ヶ月でぐんぐん打率があがっていった。そして人の良さがにじみ出てる髪型をしている中澤。先輩のしずるをたてながらもしっかり自分の持ち場では勝負していく様はさすがである。なんともここでいなくなるのはもったいない感じである。この偶然の産物もシュール5の脳・家城なら何らかの形で生かしていくでしょう。最後に重い重い地獄となんともまたシュール5らしい地味にねっとりとした罰をかして終了。ポイズンの吉田やたらと心配してたのが印象的でした。
とこんなかんじで、東京シュール5を振り返ってみました。5月は汚シュールと知シュールにわかれての同時進行トークライブ。6月は田所プロデュース。7月ルミネtheよしもとでございます。ルミネですよ。チケットとれなかったみなさんもルミネは入れるんじゃないでしょうかね。
結局、彼ら5組がシュールといわれてるわけだから、自分たちのやりたいようになっていけば結局おのずとそれがシュールになっていくわけであり、私たちは彼らの足跡をみてそれをシュールだと認識していけば2008年のシュール、今現在のシュール。シュールの最先端をみることができるのだろう。とりあえず、この人たちについていけば大丈夫。これからの日本のシュールは明るい。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。実は実際のチラシとは一ヶ所違います。気力があったら探してみてください。