黒髪


始発のバスに乗り、発車まで将来やらなにやら不毛なことを考えていたら、自転車置き場で学生2人が口喧嘩。行きかう人は無関心。神経質そうにまくし立てる黒髪はサドルに手をかけて唾液を撒き散らしていた。学校指定の青バッグにはジャラジャラと色とりどりの缶バッチ。バッグは地面に無造作に投げ出された。
殴った。黒髪がうずくまった。バッグからでた灰色のジャージ入れなおしながら茶髪は去っていった。僕は苦笑いをしながら現場から視線をそらすと、正面の鏡にほくそえんだ運転手の口許が見えた。
すぐにバスを降り、無意識に右手を上げて車をとめて家に帰った。